作品紹介
あらすじ: 人は、愛する人を失った悲しみからどのように立ち上がるのか。
自閉症を抱える中年の日系アメリカ人男性、ダニーは、 最愛の妻、京香を亡くし、彼女の故郷を訪れる。 旅の目的は、人生の最期を迎えるため。 そんな中乗った観光バスで、出会う人々に翻弄され戸惑いながらも、少しづつ心が変わっていくダニー。 葛藤と孤独の中で旅を続ける彼は、 妻の死を受け入れ、彼女のいない未来を生きる事ができるのかー?
ロサンゼルスと岡山を舞台に、同県出身・新進気鋭の監督安藤美亜、脚本にアカデミー賞受賞作品「Visas and Virtue (ビザと美徳)」 のティム・トヤマ、 日米国際共同作品「The Harimaya Bridge(はりまや橋)」 クリエーター、アーロン・ウルフォークを迎え、いのちの再生の物語をお届け致します。
ディレクターズ・ノート
映画「Korakuen」は、いのちの痛み、そして癒しを描いた作品です。
鬱や心の病は、決して他人事ではなく、誰もが生きている上で経験するとても身近なものですが、日本では特に、文化の上で悩みを打ち明ける事が恥や弱さと見られる風潮があり、 多くの人が平気な振りを続け、苦しい心を抱えているように思います。
また、映画の主人公であるダニーは自閉症を抱えていますが、日本ではそれは”発達障害”として枠組みをされる一方で、しかし海外ではGifted(ギフテッド、素晴らしい才能や技能を持った人)として扱われるという面もあります。持って生まれたその人の個性、その人だけが持つ色を、”障害”というレーベルを貼って枠にはめてしまう事で、見えにくい差別をして、その方達が生きにくい社会を作っているのは私達なのではないかと感じ、 映画「Korakuen」を通して、私達制作チームは、そういった風潮を変えたいと強く願っています。
少し私的なことをお話しさせて頂きますと、 私は、いとこを二人、なくしています。二人とも、ひっそりと心の病を抱えていました。いのちをたつという行為、 残されたものたちのやるせなさや罪悪感、そしてまた生まれる負の感情。そういった悲しみの連鎖は、どこかで断ち切るまで続くものですが、しかしながらそれを変える力は、私達一人一人が持っていると思います。この映画を通して、悩みを抱える方が心の悩みと向き合い、打ち明けられるきっかけになれるよう、「Korakuen」を制作させて頂いております。
世界がもっと一人ひとりのこころに寄り添い、優しいものになる事を願って。そういった社会に貢献できるような作品として、ロサンゼルスと岡山を舞台とした映画「Korakuen」が、心の痛みと偏見に向き合い、苦しんでいる人達全てに希望と前に進む力を与えることを、切に願っています。
映画「Korakuen」監督・プロデューサー
安藤 美亜